『乳児脂漏性湿疹』の原因と治し方&自宅でのケア

赤ちゃんによく見られる皮膚トラブルのひとつ「乳児脂漏性湿疹」。赤ちゃんの頭皮や眉毛、首など目立つ部分に見られるため、気になるママパパもいるかもしれませんね。
ここでは、乳児脂漏性湿疹の原因や治し方、アトピーとの違いや受診の目安、かゆみがひどい場合の対処法といった気になる疑問について解説していきます。
また、「頭皮のかさぶたははがすのが正解?保湿しない方がいい?市販薬は使用してもいいの?」といった病院で聞きにくいところまでママパパの疑問もまとめて解説するのでぜひ参考にしてください!
乳児脂漏性湿疹ってどんな肌トラブル?

乳児脂漏性湿疹(にゅうじしろうせいしっしん)とは、生後すぐ〜生後3ヶ月ごろの赤ちゃんに多く見られる湿疹のひとつです。特に頭皮やおでこ、眉毛の生え際、耳まわり、ほっぺ、首など皮脂が出やすい部分にあらわれるのが特徴です。主な症状を下記に記します。
▼乳児脂漏性湿疹の症状の例
- 黄色っぽいかさぶたのようなものができる
- 皮膚が赤くなり、ブツブツができる
- 頭皮に黄白色の脂っぽいフケのようなものがベッタリとつく
- 赤みとともに膿のある水ぶくれができる
- 皮膚がカサカサになり鱗のようにはがれ落ちる
- 赤みや皮がむけた状態になりかゆみを伴う

乳児脂漏性湿疹とアトピー性皮膚炎との違いについて
乳児脂漏性湿疹とアトピー性皮膚炎は、原因や症状ができる場所、症状の経過に違いがあります。
乳児脂漏性湿疹は、皮脂の分泌が過剰になり、生まれてから0~6日の生後早期にできることが多く、アトピー性皮膚炎の場合は、乾燥やアレルギー体質が原因で起こることが多いと言われています。
また、乳児脂漏性湿疹は皮脂の多い頭皮や顔などに症状が出ることが多いですが、アトピー性皮膚炎はひざの裏や首、ひじの裏など全身に湿疹が見られることが多く、左右対称に症状が出るという違いがあります。
症状の経過にも違いがあり、乳児脂漏性湿疹の場合、生後3ヶ月程度で自然によくなることが多いですが、アトピー性皮膚炎の場合、かゆみがある湿疹が2ヶ月以上続きます。
しかし、生後早期にできる湿疹は乳児脂漏性湿疹とアトピー性皮膚炎の区別は難しいでしょう。

乳児脂漏性湿疹の原因って?

乳児脂漏性湿疹は、お母さんからの「性ホルモン」の影響で、赤ちゃんの皮脂分泌が盛んになることが主な原因として考えられています。
赤ちゃんは生まれてからも胎盤を通じて受け取った母親の性ホルモンが血液中に残ります。また、赤ちゃん自身も性ホルモンを分泌しているため、一時的に皮脂分泌が増えます。皮脂分泌が増えると、皮膚の常在菌であるマラセチア菌が増えるため、湿疹ができる原因の一つと言われているのです。

他にも、赤ちゃんは皮膚のバリア機能が大人と比べて未熟なため、外部刺激に敏感で皮膚トラブルを起こしやすいのも湿疹ができる原因として考えられています。
※ 参考文献: 日本皮膚科学会ガイドライン アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024 ※ 参考文献: 日本助産学会誌 新生児期の皮膚トラブル実態とその関連要因
乳児脂漏性湿疹と母乳は関係ある?その他の考えられる原因
乳児脂漏性湿疹と母乳には直接的な関係は基本的にないとされています。そのため、母親が食生活を変えることで乳児性湿疹の改善は難しいでしょう。
ただし、最新の研究で乳児脂漏性湿疹ができやすい赤ちゃんの特徴があることが分かっています。
国立成育医療研究センターの研究から、新生児の肌に存在する保湿成分「セラミド」の量や、母乳初期に含まれる「TGF-β」という免疫を助ける成分の量が、乳児脂漏性湿疹の発症リスクに関係していることがわかりました。
TGF-βは赤ちゃんの肌や体を外部刺激から守る可能性があり、アレルギーの予防にもつながると考えられています。さらに、早い段階でのスキンケア習慣が、乳児脂漏性皮膚炎の発症リスクを下げる可能性も示唆されています。
※ 参考文献: 世界初・乳児脂漏性皮膚炎の発症と、出生時の角層脂質や初乳成分との関連が明らかに| 国立成育医療研究センター
乳児脂漏性湿疹はほっといても大丈夫?いつから・いつまで続くのか

乳児脂漏性湿疹は基本的に自然に軽快することが多いです。
そのため、症状が悪化しない場合は様子を見ていてもよいでしょう。ただし、かゆみや炎症がある場合は外用薬などの治療が必要です。
通常、生後2週ごろ〜生後3ヶ月ごろに多く症状が現れ、数日〜数週間で自然に治ります。かゆみが強い場合や、湿疹の範囲が広がっている場合、なかなか治らない場合は一度医療機関を受診しましょう。
乳児脂漏性湿疹の基本のホームケアや治し方
乳児脂漏性湿疹を予防するためには、自宅での毎日のスキンケアがとっても大切。正しい方法で継続することで、症状がはやく改善します。ここでは正しいホームケアのポイントを解説するのでぜひチェックしてください。
ポイント1. 汚れを落として肌を清潔に保つ

汚れをきちんと落とし、清潔を保つことはスキンケアの基本!洗う際はしっかり泡立てて、泡で優しくなでるように洗いましょう。
頭皮のフケやかさぶたがある場合は、無理にはがさず自然にはがれ落ちるのを待ちます。かさぶたは自然に取れていきますが、なかなか取れない場合はお風呂の前にベビーオイルやワセリンを塗り、少しふやかしてやわらかくしてから泡で洗い流しましょう。
また、赤ちゃんのデリケートな肌には、負担の少ない低刺激のベビー用ソープやシャンプーがおすすめです。防腐剤や着色料、香料などの添加物は刺激を与えて症状が悪化する可能性があるため、添加物が入っていないものを使うといいでしょう。
ポイント2. 保湿ケアも忘れずに

乳児脂漏性湿疹には保湿ケアも欠かせません。肌を保湿することで肌のバリア機能を整え、乾燥や外的刺激から肌を守ることができます。
保湿剤はベビーローションやクリームがおすすめ◎保湿ケアは以下の点に気をつけましょう。
▼保湿ケアのポイント
- 塗る前には手をきれいに洗う
- 水分を拭き取ったらすぐに保湿する
- 皮膚がテカテカするくらいたっぷりとのせる
- 頭皮に塗る場合は地肌に到達するように塗る
必要以上に保湿する必要はありませんが、薄く塗ると肝心なところに保湿剤がつかない場合があります。
また、毛量が多い赤ちゃんの場合は、頭皮にしっかり保湿剤が浸透できるよう、髪の毛を分けて地肌に保湿剤が届くように塗布しましょう。
ポイント3. 症状がひどい場合は市販薬を使う

乳児脂漏性湿疹は基本的にホームケアで自然に治ることが多いです。しかし、症状がなかなか治らない場合は市販薬の使用を検討してもよいでしょう。
症状が軽い場合は、プロペトやアズノール軟膏などで様子をみます。赤みが強く、膿のあるできものがあるときや、市販薬を使用する場合は、ロコイド軟膏のような保湿効果の高い、弱いランクのテロイド外用薬を使用しましょう。頭皮は軟膏を塗ることが難しいため、ローションタイプの保湿剤がおすすめです。
かさぶたが取れたら、市販の赤ちゃん用のローションで保湿し清潔と保湿を心がけましょう。
乳児脂漏性湿疹がひどい・治らない場合は受診

乳児脂漏性湿疹は基本的に自然に軽快することが多いですが、以下のような場合は病院を受診しましょう。
▼受診タイミングの目安
- 湿疹の範囲が全身に広がっている
- 赤みが強く赤ちゃんが不機嫌になり、かきむしるような様子がある
- 自宅でケアをしていても湿疹が悪化する
- 湿疹から黄色の液体が出てくる
このような症状がみられた場合は、保湿剤だけでなく治療薬が必要な場合があるため、医療機関を受診しましょう。
また、生後3ヶ月をすぎても湿疹の症状が続く場合はアトピー性皮膚炎など他の病気の可能性があるため受診を検討しましょう。
毎日の正しいスキンケア習慣で赤ちゃんの肌を守ろう

乳児脂漏性湿疹は、生後2~3ヶ月頃に多く見られる肌トラブルです。アトピー性皮膚炎との違いを理解し、適切なスキンケアを行うことが大切。
汚れを落として肌を清潔に保ち、保湿ケアを忘れずに行いましょう。症状がひどい場合は市販薬を使用し、改善が見られない場合は医師に相談することをおすすめします。
乳児脂漏性湿疹は一時的な肌トラブルであり、適切なケアを行えば自然に治まっていきます。毎日のケアで赤ちゃんの健やかな肌を守りましょう。